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1 人定質問
「それでは開廷します。被告人は証言台の前の椅子に座ってください。」
裁判官とされる男性の無機質な声に促されて、あなたは椅子に着席しました。
「貴方のお名前は何ですか。」
「●●●●です。」
「生年月日はいつですか。」
「平成4年5月27日です。」
「本籍地はどこですか。」
「大阪府大阪市北区・・・・・1丁目24番です。」
「貴方は今保釈されていますね。」
「はい。」
「現在居住している場所の住所を言ってください。」
「大阪府大阪市淀川区・・・・23番4号です。」
「職業は何ですか。」
「会社員です。」
あなたは裁判官から次々と質問されましたが、既に田中弁護士から内容を聞いていたので問題なく答えることができました。
(解説)
刑事裁判の第一回目の手続では、「冒頭手続」といって被告人がその人で間違いないかの確認や、被告人に対する注意事項の説明が行われます。
裁判官の質問は、「人定質問」と呼ばれるものです。検察官が裁判所に提出済みの起訴状に記載された事項(氏名・生年月日・本籍地・住所地・職業)を被告人本人に答えさせて、法廷にいる人物が被告人本人であるかを確認する手続になります。
もし書かれていることを忘れてしまった場合は、裁判官から「覚えているところまで言ってください」とフォローが出されます(答えられなかったら刑が重くなることは絶対にありません)。
なお、被告人が保釈されている場合は、居住する場所と住民票上の住所が異なる場合があります(例:親族の家に居住する)ので、前者を答えさせることが多いです。
2 起訴状朗読~罪状認否
「これから、あなたに対する窃盗被告事件の審理を始めます。まず検察官が起訴状の公訴事実を読み上げますので、その場で静かに聞いてください。では検察官、起訴状をどうぞ。」
「はい。
公訴事実。被告人は、令和8年3月17日午後6時54分頃、大阪府大阪市北区西天満1丁目5番2号所在ニコニコマート西天満店において、商品として陳列されていた同店店長和泉武弘管理のステーキ肉1点(販売価格8000円)を窃取したものである。罪名及び罰条。窃盗罪、刑法第235条。
以上です。」
「貴方には黙秘権があります。裁判の間ずっと黙っておくことができますし、答えたい質問には答えて答えたくない質問には答えないことができます。但し、この法廷内で貴方が話したことは、貴方にとって有利不利を問わず全て証拠になります。貴方が話すときにはそのことをよく念頭に置いてください。
分かりましたか。」
「はい。」
「それでは、今検察官が読み上げた事実の中で間違っている部分はありますか。」
「ありません。」
「弁護人ご意見は。」
裁判官が田中弁護士の方に視線を向けると、田中弁護士は返事をして立ち上がりました。
「被告人である●●さんと同意見です。事実関係は争いません。」
「それでは、被告人は元の席に戻ってください。」
手続が終わり、あなたは田中弁護士の隣に着席しました。
(解説)
人定質問が終わると、次に検察官が起訴状に記載された、犯罪として処罰の対象とする事実を読み上げます。弁護人としては、手元にある起訴状と見比べながら検察官が起訴状に記載されていない事実を説明していないか確認することになります(実務上まずありませんが)。
それが終わると、裁判官から被告人に対して黙秘権の説明が行われます。裁判官によって説明の表現は異なりますが、だいたい上の事例のように嚙み砕いて説明が行われます。
最後に被告人と弁護人に対して、事実の認否が行われます。事実を争う場合は、被告人に簡潔に説明させて、弁護人が補足して説明をすることが多いです。
例1(犯人であることを争う場合)
被告人「私は痴漢をしていません。」
弁護人「被告人の犯人性を争います。被告人は公訴事実記載の接触行為を何ら行っていませんので、被告人は無罪です。」
例2(正当防衛が成立する場合)
被告人「●●さんを殴ったことは間違いないですが、●●さんがナイフで刺そうとしたので身を守るために殴りました。」
弁護人「被告人の行為の存在自体は争いませんが、被告人の行為に正当防衛が成立します。被告人は無罪です。」

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