1 検察官の取調べ
勾留決定から9日が経過しました。何回か田中弁護士が警察署まで接見に来てはくれましたが、被害店舗は被害弁償と被害届の取下げには応じないとのことでした。
いつものように朝食を食べ終わったあなたでしたが、そのあとすぐに護送車で検察庁まで移送されました。到着後、30分程待機した後に検察官の部屋まで連れていかれました。
「今日は改めて今回の事件についてお聞きします。」
佐藤検察官はそう言って、あなたに対して今回の万引きのきっかけや当日の行動について細かく質問していきました。あなたは質問に対しては淡々と答え、供述調書も問題なく出来上がりました。
「まだ確定ではありませんが、あなたには過去に万引きの前科がありますので、今回は正式な裁判になるかもしれません。裁判になった場合は、弁護士の先生とよく相談しておいてください。」
佐藤検察官から一言説明があった後、あなたは警察官に連れられて部屋を後にしました。
(解説)
勾留の期間は10日間ですが、最終日の前日か2日前に検察官の取調べが検察庁で行われるのが通常です。取調べの殆どは警察署で刑事が行いますが、刑事による取調べでは分からなかった点を補ったり、取調べの中で供述内容に変化があった場合にその真意を確認したりするために検察官が取調べを行います。
また、ケースバイケースですが、何らかの理由で被疑者の生活支援が必要になる場合(例:高齢で生活に困窮している、精神疾患があり精神状態に問題がある場合等)には、検察庁で必要な支援や措置をとることがありますので、その事情聴取を行うこともあります。
検察官が担当する事件の被疑者を起訴するか・しないかについては、事前に検察官が上席の検察官の許可(決裁)を得ることになっていますので、検察官の取調べの時点では正式に起訴されることが決まったわけではありません。
2 弁護士からの連絡
あなたは午後に警察署に戻ってきましたが、取調べは実施されませんでしたので読書をしていました。
夕食を終えて夜の点検の準備をしていた最中に、警察官から弁護士の接見が入ったと連絡がありました。
「残念ながら、明日万引きの事実で起訴されることになりました。略式ではなく、正式な裁判になります。」
申し訳ない、と言わんばかりの重々しい口調で田中弁護士が切り出しました。
「裁判が終わるまでは原則釈放されませんので、保釈請求の準備を進めます。ご家族に連絡して身元の引き受けや保釈金の準備をお願いすることになると思われますが、進めてよろしいでしょうか。」
あなたは田中弁護士に手続を全てお願いしますと言って、田中弁護士から差し入れられた誓約書に署名と指印をして渡しました。
(解説)
前述の検察官の決裁ですが、勾留の最終日の前日には検察官が決裁を取り終わっていることが通常ですので、事件を担当する弁護士であれば前日の夕方、遅くとも最終日の午前中に検察官に連絡して起訴の有無を確認することができます。
被疑者の勾留期間は最大でも20日間ですが、勾留されたまま正式の裁判手続を行う方向で起訴された場合、勾留の期間は判決の言渡しがあるまで続くことになります。起訴されてから判決の言渡しがされるまでに最短でも2ヶ月はかかりますので、釈放を求める場合は保釈の手続を進める必要があります。
保釈が認められる条件はいくつかありますが、大きく分けて
〇保釈期間中の監督者
〇保釈期間中の住居
〇保釈金
の3つを確保する必要があります。
一番オーソドックスなのは、家族等の親族に監督者になってもらい、親族の住所を保釈期間中の住居として、保釈金を親族に用意して頂くことですが、難しい場合は工夫をする必要があります。


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