逮捕されたらどうなるのか⑧(公判までの期間)

1 勤務先への連絡

無事に釈放されたあなたは、翌日勤務先に出勤し、上司にこれまでの経緯を説明しました。

上司から今回の万引きについて叱られはしたものの、今回の欠勤については全て有給休暇として処理しておくこと、勤務時間外の犯罪であることから今回は社長に報告せず上司限りにしておくと説明されました。

懲戒解雇になるのではないかと内心緊張していたあなたでしたが、上司の配慮で引き続き勤務できることになりました。

(解説)

会社に勤務していたとしても、必ずしも逮捕・起訴の事実が警察等から会社に連絡がいくとは限りません。

会社が事件のことを全く知らない場合は、事件の内容について、誰に伝えるか・いつ伝えるか・どこまで伝えるかは弁護人にとって悩ましい問題です。被疑者(被告人)の意向を確認し、更にご家族の意向も考慮した上で判断します。

今回の事例では、保釈されるまでは家族が上司に対し、体調不良でしばらく欠勤することを伝えており、保釈された後に「あなた」本人が上司に対して事情を全て説明した設定にしています。

2 弁護人との打合せ

裁判の日が決まり、その二週間前にあなたは身元保証人となっている父親と一緒に田中弁護士の法律事務所を訪問しました。

「裁判の日まであと一週間ですので、今日は刑事裁判の流れの説明と、検察官が請求している証拠の確認、それとあなたに対する質問のリハーサルをします。」

田中弁護士はそう言って、あなたに「刑事裁判の流れ」と書かれたプリントを渡しました。田中弁護士はプリントに沿って手続の説明をしていきました。

「次に、こちらが検察官が裁判で提出する書類です。書類に対して同意するかしないかを決めなければなりません。同意するとそのまま証拠として提出されますが、不同意にすることもできます。○○さんの意見はどうですか。」

あなたは田中弁護士から渡されたやや分厚い書類をざっと確認し、特に問題なかったため全て同意すると伝えました。

「最後に、あなたに対する質問のリハーサルをします。当日はお父様の証人尋問も予定していますが、証人尋問については後程お聞きしたい内容をまとめたプリントをお渡ししますのでご確認ください。

それでは、私が一問一答形式で質問していきますので、○○さんは手短に答えていってください。」

田中弁護士はあなたに質問をしていき、あなたは淡々と答えていきました。

(解説)

一回目の刑事裁判(公判)の日は、おおよそ起訴されてから1~2ヶ月後の日に指定されます。日時の調整は裁判所・検察官・弁護人の都合をみてされますが、被告人が外国人で日本語を話せない場合は通訳人が必要になり、通訳人の都合も考慮しなければならないため、公判の日がさらに後ろ倒しになることがあります。

公判の日まで被告人と全く打合せをせずに裁判に臨む弁護人も中にはいますが、私は最低一回は被告人と事前の打合せを行います。被告人が保釈で釈放されていれば事務所まで来てもらいますが、釈放されていない場合は警察署か拘置所まで行って打合せを行います。

打合せで行うのは、主に①刑事裁判の概要の説明、②検察官から出された証拠の簡単な説明、③被告人質問のリハーサルです。

①は手続の内容や注意点を一つずつ説明するものですが、これについては次回以降で解説するため省略します。

②について、刑事裁判では検察官が犯罪事実を証明(立証)する義務を負いますので、立証するための証拠を裁判所に提出します。その証拠は被告人・弁護人に事前に開示されますが、被疑者の下に証拠となる資料が送られてくるわけではなく、弁護人がコピー(謄写)をしなければ事実上内容を確認することができません。

コピーされた証拠を確認した上で、証拠を争わない(同意する)のか、争う(同意しない)のかを決めることになります。もっとも、今回のような事実関係を争わないケースでは証拠を全て同意して進めることがあります。

③について、被告人質問は証人尋問の被告人バージョンであり手続自体は証人尋問と殆ど変わりません。被告人質問では犯行の動機や経緯、今後の再犯防止策等を被告人の口から説明してもらうことになりますが、アドリブで行うことは難しいため、私は事前にリハーサルを行っています。

これに対し、事実関係を争わない事件で証人尋問を行う場合は、証人の方(家族、勤務先の上司等)のスケジュールの都合や、尋問の時間が短く質問の内容も想定しやすいことからリハーサルを行わず、公判の直前に簡単に説明して臨んでもらうこともあります。

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