1 弁護人との打ち合わせ
午後の取調べが終わり、夕食を留置部屋で食べていたあなたでしたが、警察官から田中弁護士が警察署に接見に来たので、食事が終わった後に面会室まで案内すると説明がありました。
夕食を食べ終わり面会室に入ると、田中弁護士が面会室に待っていました。
「弁護士費用はご家族から頂きましたので、先ほど弁護人選任届を警察に提出しました。これから○○さんの弁護士として、早く外に出られるように尽力します。」
「取り急ぎ、お店には電話で謝罪と弁償の申し出をしましたが、担当の方からは弁償に応じるか回答を頂けていません。」
「明日、おそらく検察庁で取調べがあって、その後裁判所に連れていかれると思います。明日勾留の決定が出てしますと10日間警察署にいないといけませんので、検察官と裁判所に働きかけて避けたいのですが・・・」
田中弁護士はあなたに、明日以降の手続の流れや弁償交渉の経過等を説明しましたが、もしかしたら警察署に暫くいないといけないのではないか、解雇されるのではないかと思い心配になってきました。
(解説)
警察署では夕方頃に夕食が提供されることが多いです。弁護士が夕方に警察署に面会に行ったとしても、被疑者本人が食事中の場合は食事が終わるまで面会できないこともあります。
因みに、警察署内での入浴は隔日となっており毎日お風呂に入れる訳ではありません。また、隔週で医師による健康診断を受けることもできます。
被疑者本人が弁護士を依頼する場合、弁護士が弁護人選任届という書類を警察署又は検察庁に出す必要があります。この弁護人選任届が提出されないと、捜査機関や裁判所で弁護士の情報が共有されず、弁護活動に支障が生じることになるので重要です。
逮捕後の手続ですが、法律上は身柄を拘束した時から48時間以内に、検察官に対して被疑者本人と事件資料一式を送らないといけません。これを検察官送致(「送検」)といいます。
よく報道で「書類送検」という用語が使われますが、これは被疑者が逮捕等の身柄拘束がされていない状態や、既に起訴されている状態で事件資料一式だけを警察署から検察庁に送付する手続を指します。
被疑者本人と事件資料一式を受け取った検察官は、被疑者本人に対して簡単な取調べを実施した上で、引き続き留置施設に留置する必要があると判断した場合は、受け取った時から24時間以内に裁判所に対して被疑者の勾留請求をしなければなりません。この勾留の請求ができるのは検察官だけですので、警察官はできません。
勾留するかどうかの判断を行うのは裁判官ですが、裁判官が勾留を認める決定をすると、勾留した日(通常は勾留の決定をした日)を含めて10日間被疑者は留置施設に留置されることになります。ですので、弁護士としては、検察官や裁判官に働きかけて勾留請求をしない・勾留決定をしないようにすることが最初の宿題になります。
被害者が存在する類型の犯罪においては、被害者と示談が成立し、被害者に被害届を取り下げて貰えれば、釈放されることが多いです。そのため田中弁護士は示談のためにスーパーに連絡を試みましたが、店舗側は被害弁償については保留すると回答しています。被害弁償については、被害額が比較的少額であったとしても、弁償に時間がかかる場合も多く、被害弁償自体を拒否する店舗も出てきています。
2 検察官送致から裁判所への移送まで
次の日あなたは、警察官から検察庁に送致されることになったことを説明され、護送車で警察署から検察庁に移送されました。検察庁に到着後、あなたは検察庁の中の留置部屋で待機していましたが、しばらくした後に警察官に連れられて、取調室に通されました。
取調室には警察署の取調室にあったテーブルよりも少し大きめのテーブルがあり、テーブルの奥にスーツを着たやや年寄りの男性と、パソコンに向かっている若い男性がいました。
「あなたは○○○○さんですね。あなたの窃盗被疑事件の担当検察官の、佐藤と申します。隣にいるのは事務官の・・・です。」
佐藤という年寄りの男性は、簡単な自己紹介と黙秘権の説明をした後に、今回の万引きの事件についての聴取を行いました。30分程警察署での取調べと同じような質問がされた後、
「これで弁解録取を終わります。既にあなたの弁護人から事情は聞いていますが、今回は、あなたが証拠の隠滅と逃亡する可能性が否定できませんので、勾留の請求を行う予定です。」
と説明がありました。
あなたは事務官が印刷した弁解録取書に署名と指印をした後、警察官に連れられて取調室を後にしました。その後、護送車で検察庁から裁判所に移動することになりました。
(解説)
検察庁に送致された後も、すぐに検察官の取調べが実施される訳ではありません。検察庁の中には、被疑者を待機させるための留置部屋が備わっています。今回はありませんでしたが、検察庁には面会室も設置されていますので、弁護人であれば被疑者と検察庁で接見することもできます。
捜査を担当する検察官ですが、万引き等の比較的複雑ではない類型の事件については、司法試験を合格して研修(司法修習)を受けている「検事」ではなく、検察庁内の内部試験に合格して検察官として業務を行う「副検事」が担当することが多いです。勿論、副検事の方は検察の業務に精通したベテランですので、副検事よりも検事の方が検察官として優秀、ということは一概にはいえません。今回の事例では佐藤さんを副検事の検察官と設定しています。
検察庁での最初の取調べは比較的短時間であり、疑われている犯罪事実(被疑事実)について認めるか、認めないならどこが間違っているか聞かれて終了となります。取調べの調書の作成も含めて30分程度で終了することもあります。
検察官は、被疑者を勾留すべきと判断した場合は、取調べ終了後すぐに勾留請求書を裁判所に提出します。勾留請求後、被疑者は裁判所で裁判官の質問を受ける必要があるため、他の被疑者と共に護送車で裁判所に向かうことになります。

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