借金を1円も払わなくてよくなる自己破産ですが、ノーリスクで払わなくてもよくなる訳ではありません。
以下、自己破産を行うときのデメリットや問題点を説明します。
1 破産手続中に仕事をすることができない職種がある
会社の取締役に就任している方は、民法上会社との契約(委任契約)が終了するため、退任する必要があります。もっとも、銀行の取締役等を除いて、株主総会を開いて再度選任してもらうことは可能です。
弁護士、司法書士、行政書士、税理士、公認会計士、宅地建物取引士のように法律や会計に携わる国家資格を有する場合は、破産手続の開始と同時に登録を取り消す必要があります。免責許可が出た後は再登録の申請をすることが可能です。
それ以外にも、警備員・保険勧誘員についても登録を取り消す必要があります。
さらに、事業で官公庁から公共工事や物品調達の入札を行っている個人の方については、自己破産手続の開始から免責許可が出るまで入札ができなくなります。
これらの職種に従事していて、他の職種への転換や再就職が難しい方については個人再生を検討することになります。
2 一定額以上の財産が「没収」される
自己破産の原則は、
「債務者が現在保有する、今後生活していくために必要不可欠な財産以外の財産全てをお金に換えて公平に債権者に弁済し、なおも残存する債務について裁判所の特権で支払を免除させる」
というものです。
この、「必要不可欠な財産」(法律上「自由財産」と呼ばれます)は、具体的には
①99万円以下の現金
②法律上差押えが禁止されている財産(家財道具、生活保護受給権、確定拠出型年金等)
③破産手続開始決定後に取得した財産
④時価額が20万円以下の財産(厳密には自由財産に該当しませんが、裁判所に自由財産としてもらうように申し出ることができます)
になります。
これ以外の家屋や高価な車、解約返戻金が付いた生命保険、株や投資信託、将来の退職金については裁判所によって換価されることになります。
なお、ローンが残っている不動産や商品で時価額がローンの残額を下回るもの(いわゆる「アンダーローン」)については必ずしも換価の対象になりませんが、換価の対象にならない場合でも破産手続の前後で債権者によって売却又は回収されてしまうため、手元に残すことはできません。
3 免責の対象にならない借金もある
自己破産では、全ての借金を返さなくてもいいわけではありません。破産法で免責の対象にならない債務の類型が列挙されています。
①税金・社会保険料
これらについては、破産手続中・手続終了後に管轄する機関との間で減額・免除の交渉を行って頂く必要があります。
②悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権
③故意又は重大な過失により生命又は身体に危害を加える不法行為に基づく損害賠償請求権
②「悪意」の認定についてはハードルが高くなっています。不貞慰謝料は原則免責の対象になります。
③について、刑事上処罰の対象になる殺人・傷害行為、危険運転によって発生した交通事故の損害賠償請求権は該当します。これに対して、通常の過失(前方不注視等)によって発生した交通事故の損害培養請求権は該当しません。
④別居中の婚姻費用、離婚後の養育費
⑤従業員の給与債権・預り金の返還請求権
⑥存在を知っていながら、裁判所に提出する債権者一覧表に記載しなかった債権者の債権
⑥について、裁判所に申し立てた後に記載漏れに気づいた場合の債権者の債権は該当しません。
その他、ブラックリストの登録の問題もありますが、これは他の債務整理の手続と同一ですので割愛します。

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